ヘッドホンの目標特性(ターゲットカーブ) ― 2026年11月03日 15:02

これは、主にやや古いですが2013年のAES論文 Sean E. OliveによるListener Preference For DifferentHeadphone Target Response Curvesの内容によっています。

ヘッドホンの目標特性として広く用いられつつあるハーマンターゲットカーブは、主に、性能の良いスピーカーの室内特性と人体(頭部・胴体・耳)の影響から構成されています。
そしてハーマンターゲットカーブは、適切なリスニングテストにより、従来の自由音場特性や拡散音場特性よりも、主観的に好まれることが確認されています。
ただし、それは6~7割の人が好むという特性であるため、ある個人がこの特性を好むとは限らないことに注意が必要です。

1. 性能の良いスピーカーの室内特性とは
これは、性能の良いスピーカーを、ある室内に適切に設置した時の、リスニング位置における周波数特性です。
性能の良いスピーカーとは、参照軸上正面の特性がフラットで、軸外特性が滑らかなスピーカーです。これには、共鳴や可聴のひずみ、色付けがないことが含まれます。
一般的なスピーカーは、低域では全方面に音を拡散し、高域では主に正面に音を出力する傾向があります。そのため、スピーカーを室内で鳴らした場合、壁・床・天井などで音は反射されるため、全方向に放射される低域はより大きな音で、リスナーに届けられることになります。さらに高音は、壁・絨毯・家具などで吸収・拡散されやすいので、より音量が低くなる傾向を示します。
この論文では、ハーマン研究所のリファレンスルームにおけるJBL LSR6332の特性である、300Hzから50Hzにかけて約8dB上昇する周波数特性(RR)と、それを修正した20Hzから20kHzにかけて滑らかに約9dB減少する特性(RR1)を室内特性としています。

2.人体(頭部・胴体・耳)の影響を加味した特性とは
これは、人が音を聴くときに受ける、人体表面での音の反射や、人体による遮蔽、外耳・耳孔による共鳴などの影響を考慮した特性です。
これは、少なくとも頭部・胴体を再現したマネキンに耳シミュレートできる計測装置(外耳・耳孔を再現し、鼓膜位置にマイクが設置されている)を組み込んだ装置を、リスニング位置に設置して、1で述べた室内特性を再現した音を計測することにより得られています。

論文では、上記2つの特性の他に、自由音場特性や拡散音場特性等を比較し、RR1に基づいた特性が最も好まれると結果が出ています。
ハーマンのヘッドホンの目標特性は、この論文の後、10年にわたって検証・改良され、ヘッドホン・イヤホンを選ぶ際の有効な指標となっています。これについては、2025年に発刊された「Sound Reproduction 第4版」の第15章にまとめられています。
ヘッドホンの周波数特性に関しては、年齢・性別によって好みの差が生じており、この特性が完璧であるとはいいがたいでしょう(ある程度はイコライザーで対応可能ですが)。また、ヘッドホンの評価には、可聴ひずみの度合いや実特性に影響を与える装着性なども必要です。使い続けることを考えると、交換が必要なパッドなどの耐久性・入手性・価格なども、購入時に考慮する必要があります。
以上の情報が、手軽に入手できるとよいですが、以前より楽になったとはいえ、海外サイトを複数確認する等の手間が必要なのが現状です。

MDR-7506からMDR-M1へ ― 2026年10月03日 17:08

SONY MDR-M1を購入しました。今まで4半世紀ほど使用していたMDR-7506に比較して、サブベースが出るようになり、また着け心地が良くなりました。中高域のひずみが改善されたのは、リスニング用途としては良くなったいえます。ただし全体的にこもり気味で、周波数バランスは悪くなったように思います。加えて低域に向かって、ややひずみが増えるように感じます。これはイヤホンに比べであり、スピーカーほどではありません。

周波数バランスについては、ヘッドホンは間接音は無い(あったとしても時間差がほとんどない)ので、パラメトリックイコライザーが良く効きます。AuotEQなどのEQ設定をEQ-APOなどに反映するだけでも、かなり改善されます。

パッドの劣化がどのようなるか不明ですが、べとつくなどの変化がなければ、パッドを交換して使い続けることになるでしょう。

ケーブル交換ができるようになっている点は、接続先に合わせた対応はケーブル先端側で行えばよいので良くも悪くもありません。ただしコネクタは特殊なので、プラグの入手性が悪いのが難点です(結局アリエクで買いました)。はんだ付けなどの工作性に優れ入手性のよいXLRコネクタを採用したほうが良かったと思います。

以上を見返してみると、下の価格帯に コネクタの改造(ケーブルを直結する等)が必要ですがオーディオテクニカ ATH-M50xがあることを考えると、MDR-M1にこだわる必要は無かったですね。

2026.10.4 追記
上記をまとめると、下記になります。

・MDR-M1の周波数特性はMDR-7506と全く異なっており、関連のある商品であるとはいいがたい(後継機種などではない)。
・MDR-M1の周波数特性の意図(用途)は理解できないが、EQで補正することで使えるようになる(MDR-7506よりはよい)。

結局、ローエンドの延長と全体的にひずみが低減されたMDR-7506を期待したら、EQ補正ありで、なんとか達成できたということでもあります。それならば、MDR-M1にこだわる必要がありません。

Pico2でDSPi ― 2026年08月02日 20:58

今年になってから、Weeb LabsのTroy氏が作成したDSPiという、ワンボードコンピュータのPicoまたはPico2上で電子的なクロスオーバーを実現できるアプリが、下記フォーラムで話題となっていましたので、試してみました。

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/introducing-dspi-a-powerful-user-friendly-and-open-source-dsp-for-less-than-a-cup-of-coffee.69343/

DACには、I2S接続できるPCM5102Aを使用した安価なものを使用しました。写真には2つ写っていますが、1つはメインの2ch用、もう一つはSW用となります。

DSPiの設定および使用法は、上記フォーラムで紹介されているgithub上の説明に従って行えば、問題ないでしょう。

DACは、基板裏のジャンパーの設定と、SCKをGNDに接続することを忘れなければ、正常に動作します。

ジャンパーの設定は下記のとおりですが、入手した基板の表記が間違っていたので注意が必要でした。

1→FLT→L
2→DEMP→L
3→XSMT→H
4→FMT→L

L側はGNDに接続となるので、テスターで確認して行うとよいでしょう。

DSPiの改良・機能追加は、現在も進行中で、今後の進展が楽しみです。

メインボリュームも実装できそうなので、それも試して問題がなければ、涼しい季節になったころにケースに入れたいと思います。

2026.8.8 追記
DSPiの機能でDACをミュートできる機能がありました。

XSMTのジャンパーを取り除いて、XSMTをGPIO0に接続し、DSPiコンソールでミュート設定を行うと、電源ON/OFF時のポップ音がでなくなります。

また、ポテンショメータ(可変抵抗器)による音量調整もできるようになっていました。

とりあえず、手持ちの100k Aカーブ(Bカーブが推奨)のポテンショメータを取り付けて設定したところ、やや面倒ですが調整できることを確認しました。

全体の音量調整には、MasterとUserがあるのですが、v1.1.15では、Userのみが調整可能なようです。

DSPボードNV Archerを試す ― 2026年06月27日 10:49

これは、手軽に2.1chシステム、すなわち任意のクロスオーバーを設定したサブウーファーを加えたシステムを構築できるDSPボードです。

MVSILICON製のDSP IC BP1048B2を使用した製品で、入力はUSBデジタル,Bluetooth,AUXアナログ2chとなっています。

Windows 11では、追加のドライバーは不要です。

設定には、ACPWorkbench V2を使用します。なお、ACPWorkbench V3は使用できません。

USBデジタル入力で使用してみましたが、曲切り替え時の小さなノイズの他には、特にノイズは感じられませんでした。

出力は、下記となっていました。

・LR出力(DAC0): Audio Effect 2
・Mono Base出力L(DAC1): Audio Effect 4

付属するパラメトリックイコライザ(PEQ)は、in側とout側で各10バンドあり、DAC0,1合わせて40バンドでした。
クロスオーバー設定は、inまたはoutのいずれかで、High-Pass, Low-Passフィルタの設定をすればよいでしょう。
PEQ設定は、名前を付けて保存し、必要に応じで呼び出すことができます。

また、EQとその他の低域強調や遅延設定などの設定を含めた設定もまとめて複数保存することができ(A, B, C...)、基板にスイッチを取り付けて切り替えることができるようです。

その他に、ポテンショメータを取り付けることで、トーンコントロール機能を使用することができるようです。

2.1chシステムで使用する機能として、High-Pass, Low-Passフィルタ、遅延処理が使用できます。位相切替(0,180度のみ)もありますが、180度は正常動作しないようです。
遅延処理は、20Hzの1周期に相当する50msまで調整可能ですので、十分な性能であるといえるでしょう。

私のPCに接続しているサブウーファー(SW)は密閉型であることに加え、クロスオーバー周波数である80Hz付近では、メインスピーカーに対して遅れは生じないはずです。しかし、特性確保のため、メインスピーカーから離れた位置に置いています。その距離差の影響から、5msほど遅れてリスナーに届きます。遅延処理をメインスピーカー側に行うことで、これを解消できますが、その効果を実感することはできませんでした。

現状でPEQとしてEqulizer-APOを使用しており、クロスオーバーはSWのフィルター(High Passを含む)で不満がないため、この製品をケースに入れて使用する動機は薄い状況です。

最近は、10バンドPEQ機能を備えたUSB-DACを、安価に入手できるようになってきました。今後、クロスオーバー設定が可能な2.1ch機能を有したDACも製品化されると思います。その時は、試してみたいと考えています。

なお、これらの機能はMini-DSPで可能ですが、PCのシステムには、やや大げさに感じられるのです。

REWによる計測がうまくいきました ― 2026年05月30日 17:20

うまくいかなかった原因は、Windowsによる音響効果によるものだったようで、この機能を無しとすることで、不具合はなくなったようです。

図は、JBL 4312G + YAMAHA NS-SW700 (70 Hz クロス)のリスニングポジションの計測結果です。

パラメトリックイコライザーとして、1.57 kHz, -3.1 dB, Q 4.80をかけています。
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このブログについて

アンプ作りなどを楽しみとしているnkiです。
作るときには,Webで公開されている様々な作例などを参考にしてきました。しかし,色々といただくばかりでは申しわけないので,今まで作ってきたもの(オリジナルなものではありませんが)を,ここで公開していきたいと思います。

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